日本貨幣史 History of Japanese Currency 

 和銅元年(708年)の和同開珎(わどうかいほう/わどうかいちん)発行以来、1300年に亘って我が国ではその時代の必要に合わせた貨幣が発行され、時代の移り変わりと共に姿を消していきました。「日本貨幣史」では、貨幣の変遷を中心に我が国の歴史を紐解いていきます。( 全7集 )

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それは世界中へ拡散した

第1集 貨幣の誕生

 


貨幣の誕生

 紀元前7世紀、小アジア(現在のトルコ)のリディア王国で世界で始めて貨幣が作られました。ギリシア人がこれを真似して使い始めると商業が盛んになりました。され、広く流通していました。アジアでは大陸(現 中華人民共和国)における戦国時代(紀元前403−前221)に商工業が盛んになり、青銅の貨幣が用いられ始めました。この頃の貨幣は、皆が欲しがるものを模って製作されることが多く、刀や鍬の形をした貨幣が作られていました。

 紀元前221年、大陸の統一を成し遂げた秦の始皇帝(在位 紀元前221−前210)は貨幣も統一し、半両銭などを発行しました。

写真 漢 半両銭

日本貨幣史のはじまり

 お金が生まれる前の日本では、取引に、現物の物資がそのまま用いられていました。つまり、税を払う場合にたとえれば、「絹」「米」「労働力の提供」という形で納めるわけです。ただ、こちらの持ち物と相手の欲しがるものが合致していなければ交換できないことや、保存にも手間がかかることが難点でした。 

和同開珎の誕生

 和銅元年(708年)、我が国最初の貨幣「和同開珎(わどうかいほう/わどうかいちん)」が発行されました。様式は、大陸にあった唐の銭貨を参考にしたものです。この後、200年に亘り朝廷から12種類の銭貨が発行されました。これを皇朝十二銭と呼んでいます。

 なお、和同開珎以前に「富本銭」と呼ばれる銭貨が存在していたことが、近年明らかになりました。ただし、富本銭は日常の取引を想定して製作されたものではなく、祭事や呪術に用いるものとして作られた可能性が高いとされています。

 

皇朝銭の衰退と渡来銭

 

ようやく発行された我が国の銭貨ですが、残念ながらあまり流通しませんでした。使用できる地域が都周辺に限られたこと、人々の朝廷に対する信頼が乏しかったこと、時代が下るに従い、国産の銅を確保できなくなったことなどが原因とされています。結局、10世紀に発行された乾元大宝を最後に朝廷は銭貨を発行するのを止めてしまいました。

 その後、商業取引が盛んになるに従って、その決済手段を簡素にする必要が出てきました。そこで、再び銭貨を発行する機運が高まったのです。ところが、造幣設備は既に廃棄されていたため、国産の貨幣を準備することが出来ませんでした。そこで、時の権力者は、外国から銭貨を手に入れることにしました。まず、日本から大陸に物資を送って貿易を行い、代金として手にした銭貨を国内に持ち込みます。そして、その銭貨を国内での決済手段として用いたのです。平清盛の「日宋貿易」、足利義満の「日明貿易」が良く知られています。

写真 唐 開元通宝

 

金銀貨の登場と江戸幕府
 

 平安時代から室町時代まで銭貨は日常の決済手段として盛んに用いられました。しかし、500年の時間が経過する中で問題も生じます。銭貨の供給が外国頼みになっていること、高額決済に不便なことがその一例です。戦国大名の武田信玄が「甲州一部金」と呼ばれる金貨を発行した後、高額決済手段としての金銀貨が現れるようになります。戦国の世を制し、関白となった豊臣秀吉は大型金貨である「大判」を鋳造しました。

 秀吉の没後、徳川家康は関が原の戦い、大阪夏の陣・冬の陣に勝利し、豊臣家を滅ぼしました。江戸に幕府を開いた家康は、日本全国を支配するための基盤を築き始めます。その政策の一つが通貨制度の改革でした。これまで、500年に亘り我が国は外国王朝の発行した銭貨(渡来銭)を使用してきましたが、これを止めて江戸幕府の権威を基盤にして貨幣を発行するように改めました。渡来銭の代わりに発行されたのが「寛永通宝」です。実に、600年ぶりに我が国の政府の元で発行された銭貨でした。寛永通宝は江戸幕府が倒れた19世紀まで、広く用いられました。

 高額決済に対応するため、金銀貨が発行されるようになりました。銀取引が主流であった大阪では、重さを量って取引する、丁銀や豆板銀が使用されました。金取引が主流であった関東では、一枚一枚の重さが同じである、小判や小額金貨が用いられました。

写真 寛永通宝

藩札の発行

 全国で通用する金銀銅貨に加え、各藩(現在の都道府県、地方自治体に相当)では領内でのみ通用する「藩札」を発行しました。藩札の発行は時代が明治へと変わるまで続きました。

 

次回

そして、円が生まれた

第2集 明治維新と近代幣制整備

 

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参考文献 

日本貨幣商協同組合 編「日本貨幣カタログ 2004年版」日本貨幣商協同組合(2003)

文部省検定済教科書「詳説世界史 改訂版」山川出版社(1998)

日本銀行ウェブサイト http://www.boj.or.jp/

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日本貨幣史 History of Japanese Currency シリーズ一覧

それは世界中へ拡散した

第1集 貨幣の誕生 

そして、円が生まれた

第2集 明治維新と近代幣制整備

海を越え、円は通貨圏を形成した

第3集 帝国主義時代と新領土の獲得

束の間の平和、混乱の再来

第4集 第一次大戦後の混乱と戦争前夜

通貨も戦場へ渡った

第5集 第二次世界大戦

円は紙屑と化した

第6集 終戦と占領下の日本

Japan as Number 1

第7集 高度経済成長

※題名の「1300」は、平成20年(2008年)に日本最初の貨幣、「和同開珎」発行から1300年を迎えることにちなみます。

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